映画キチガイの中学時代 (1)
中学校の頃だから大昔の話なんだけど「難破船」や
「ポリアンナ」や「罠にかかったパパとママ」に
主演していたヘイリーミルズに夢中になった時期が
あって、学校をさぼって毎日映画館通いして、同じ
映画を繰り返し見てたんだけど、映画の合間に
「ヘイポーラ」なんかが薄暗い映画館に流れて
目をつぶって聴いているうちに、何故だか自分でも
判らないけど、スクリーンのある舞台によじ登って
みたくなって、やってしまったんだ。
舞台に上がると後ろからお客さんの視線が集まって
恥ずかしいから舞台のそでのカーテンの陰に隠れて
スクリーンをすぐ近くで見てね。
スクリーンは白かと思ったら乳白色でさ、穴が沢山
あいていてさ、あとから知ったんだけど映画の音が
客席によく通る様に穴があるらしいんだ。
うっとりしてしまった。
でもすぐに映画館のお兄さんが飛んで着て、猫を
つかむ様に首根っこを掴まれて引きずり下ろされて
連行されたんだけど、それが映写室に連れて
行かれてさ、そのお兄さんは映写技師だった
んだろうね、10分間くらい説教されたんだけど
嬉しくってさ、映写室の中が見物できて夢の様な
時間だった。
まるで「ニューシネマパラダイス」の世界そのまま
なんだ。映写機が二台あってさ、タバコの煙りで
白くなって、もうひとりお爺さんがいて、もう
説教なんか全然耳に入らなかった。
兄さんが説教をしている間、お爺さんは客席を
のぞいて、映画のスクリーンの右隅に
パンチが2回映ると映写機を切り替えるんだ。
そして元のテープを高速で巻き戻すんだ。
かなり大きな音がするんだよね。客席にいる時は
全然気が付かなかったけど。
「もう帰っていいよ」と言われても、
もっといさせて欲しかった。何でもいいから
手伝いをさせて欲しかった。あの時の出来事は
現在でもいい思い出なんだ。
その日家に帰ったら学校から連絡が来たらしくて
学校をさぼったのが親にバレてしまって、親父に
ぶん殴られて鼻血が止まらなくて大変だった。