あんどーなつ (三社祭)空想天国 7/7
番組とは関係ない話です。
番組が三社祭の話だったんで。
****************
昔、
三社祭の日に、
あまりにも仕事が忙しいのに嫌気がさして
デコボコ三人組で3階の事務所の座敷で
茶碗酒をちびちび飲んでいたら、
階段をのぼって来る足音がする。
誰かと思えば金原亭の馬生師匠。
この人はお酒が好きでいつも酔っ払っている。
「どうしたい、いい若いもんが祭りの日に
こんなトコでとぐろ巻いてたんじゃ
仕方がねぇじゃねぇか、神輿でもかついで来い」
黙って素直に聞いてればいいものを
バカのAが
「そうじゃないんですよ、師匠。私たちも
神輿をかつぎに行ったんですが、氏子でないと
かつがせない、って断られたんです」
正義感の強い師匠ですから、これには怒り、
「なに、氏子でねぇやつにはかつがせねえだ?
そんなべらぼうなコトがあるもんか。
オレが掛け合ってやるから付いて来い」
ってコトになってしまった。
祭りの会所まで来ると、
師匠はテントの外から大声で
「カシラはいるかい?!」
昭和の今どき、江戸時代みたいなカシラが
いる訳ないと思ったら、ちゃんといるんだね。
「へい、あっしが○組をたばねます、カシラの
○五郎でございやす。大師匠にはわざわざの
お運びで恐れいりやすが、何か不都合でも
ございやしたか?」
幡随院長兵衛みたいな、苦みばしったいい男。
「ございやしたか、もないもんだ。おめえさん
トコじゃ何かい・・」
ときどき酔いで、もつれる舌で師匠が
まくしたてていると、
そのうち異変に気がついたらしく
祭りの若い衆が「なんだ、どうした」って
集まって来て、
何しろ3度の食事よりも喧嘩が好きな連中だから
これは困ったなぁ、と思っていたら
「ここは通行の邪魔になりますんで、よろしければ
中にへーって、酒でも飲んでいっておくんなさい」
お酒と聞いて師匠はぐにゃりとなってしまった。
「そうかい」と言って、こちらを向いて
「おめえたちは先にけえってろ」
ってコトになってしまった。
すっかり酔いがさめてしまったので、
また3人で事務所の座敷で酒を飲みなおしていたら
○亭なんとかという前座さんが階段を
あがって来て「うちの師匠を知りませんか?」
っていうから、祭りの会所で酒のんでるよ、って
教えてやった。
師匠の出番が近いらしくて前座さんは大慌てで
師匠を探しに行きました。
さてここからです。
しばらくすると師匠が帰って来まして、高座も
無事に済んだのですが、
今度は前座さんが帰って来ない。
みんなで探し回ったのですが、どこにもいません。
祭りの日とはいえ、着流しに雪駄という姿
ですから、かなり目立つハズなのに
どうしても見つからないのです。
とうとうその日はあきらめてしまった。
で、行方不明なのです。
友人知人を探しても見つからない。念の為に
親元に連絡してもわからない。
天にのぼったか、地にもぐったか。
それ以来、
今日に至るまで全く消息が知れないのです。
以上、
我々は「怪談かさねがふち」と呼んでいます。