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2014年2月24日 (月)

やしきたかじんさんのケンカ

やしきたかじんさんが亡くなった。大阪で
産まれた江戸っ子という表現がぴったりと
はまる人だったらしい。

私の師匠談志とはそりが
あわなかった。テレビの本番で2人は大げんかを
したことがある。たかじんさんのトーク番組に
談志がゲスト出演した時のことだ。

たかじんさんがバーのマスター、談志が客という
設定で実際に酒を飲んでトークをする。
トークが途中シモネタになった。「下品な番組
だなあ」と吐き捨てた。するとたかじんさんが
「文句あるんかい。やるっちゅうなら表に
でんかい!」とすごんだ。談志はその言葉に
激怒して「誰に向かって口をきいているんだ!」
と一喝した。それに対し「おのれじゃ!」と
たかじんさんは灰皿を投げつけた。

番組はそこで収録中止。私は現場に居合わせた
訳ではないが、その話を聞いた時、実に不愉快
だった。自分の師匠だから肩を持つ訳ではないが
たかじんさん、いくらなんでも芸能界の先輩に
失礼ではないか。下品な番組だと愚弄されて
腹が立つのは当然。自分の大切な宝物を初めて
来たやつに馬鹿にされたら灰皿のひとつも
ぶっつけてやりたくなるだろう。

だけども談志は
その番組にわざわざ来たんだ。来たという事実が
あるのだ。ましてや談志は先輩。文句を言うに
しても相手に対する敬意がなくてはただの
チンピラだ。

しかし芸能界の誰もが頭の
あがらない談志に喧嘩をふっかけたという事が
たかじんさんの武勇伝になるし、視聴者も
そういった場面を見てみたいというのが
たかじんさんの計算にあったのかも知れない。

あらゆるテレビ番組をチェックして、研究して
視聴者の喜ぶ内容を自分の番組で発信して来たと
言われているたかじんさんだから、間違いなく
計算であったと私は思う。

お会いする機会が
あったらその事を伺ってみたいと考えて
いただけにたかじんさんの早世は残念だった。

もし計算でなく感情だけの行為だったら
チンピラという表現を使っておきながら
矛盾しているが私はたかじんさんの大ファンに
なっていただろう。

力関係も気にせず、自分の
番組を愚弄されたからそれが悲しくて怒り、
灰皿をぶっつけてしまった。実に人間的で
かわいらしい。

社会人としては駄目だが芸人
としては愛すべき人物である。実は談志が
そういう人間だったのだ。計算で喧嘩をしない。

自分の師匠である五代目柳家小さんにデコピン
をした事がある。談志は小さん師匠から破門
された。だが2人の関係は親子以上であった事
は有名な話だ。

破門された後、談志は小さん
師匠と楽屋で遭遇してしまったことがある。
談志が楽屋に入ってくると小さん師匠は不機嫌
になった。談志はおかまいなしに「破門された
んだから師匠も弟子もないぞ」と小さん師匠に
聞こえるようにうそぶく。

しばらく来客と話し
をしていた談志だったが、途中、時間を持て
余しているように見えた小さん師匠に手招き
をした。小さん師匠が何だい?と顔を近づけた
とたん、おでこ目掛けてデコピンをしたのだ。

小さん師匠は顔を真っ赤にして怒ったが
これだけ聞くと談志の愚行はたかじんさんの
行為よりひどいように思われるが、談志から
するとそうでもしないといたたまれなかった
のであろう。

また小さん師匠ならばそのくらい
のことは許してもらえるという談志一流の
甘えがあったのだろう。
小さん師匠からすればたまったものでは
ないが、私はこのエピソードに2人の
愛を感ずる。

立川志らく 著

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