佐村河内(さむらごうち)守さんの
ゴーストライター事件のせいで
文部科学大臣賞を小学4年生で受賞した
森田 悠生くんが疑われている。
作文があまりに素晴らしいのと
お母さんが塾の先生をやっており
(お父さんは昼間は仕事で)
壁ひとつへだてた家の2階の部屋で
となりの部屋で授業をしている母親の声が
小さい頃から聞こえており
自然に素晴らしい文章を書ける才能が
身についたという説に異論をとなえる
人が多数でてきたらしい。
森田くんはドラゴンボールの本が欲しくて
金めあてで応募したというごく
普通の小学生で
「天才」にはとても見えない。
そのあたりも疑われる要因になっているの
かも知れない。
しかし「永遠の0」を読破したというし
レポーターが家に訪ねて行くと
森田くんの机の上には次の作文が置いて
あり、
小説にも挑戦したい、と話していたそうだ。
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小学生は5年生から、ぐんとのびます。
私は目の当たりにしているので確信があります。
5年生が境界線なのです。
だから4年生の森田くんは早すぎる気もします。
でも中学生で司法試験に合格した子も
いますから、
森田くんが「天才」というのも
あながち的外れとは言いがたい気もする。
でもねぇ
作文は文章の他に、書く順番も重要ですから
小学4年生に出来るかどうか?
すでに読まれた方も多いと思いますが
興味のあるかたは、どうぞ読まれて
判断して下さい。
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――ぼくがいるよ
(千葉県 富津市立富津小学校 四年 森田悠生君)
お母さんが帰ってくる!
一ヶ月近く入院生活を送っていたお母さんが戻ってくる。お母さんが退院する日、ぼくは友だちと遊ぶ約束もせず、寄り道もしないでいちもくさんに帰宅した。久しぶりに会うお母さんとたくさん話がしたかった。話したいことはたくさんあるんだ。
帰宅すると、台所から香ばしいにおいがしてきた。ぼくの大好きなホットケーキのはちみつがけだ。台所にはお母さんが立っていた。少しやせたようだけど、思っていたよりも元気そうでぼくはとりあえず安心した。「おかえり」いつものお母さんの声がその日だけは特別に聞こえた。そして、はちみつがたっぷりかかったホットケーキがとてもおいしかった。お母さんが入院する前と同じ日常がぼくの家庭にもどってきた。
お母さんの様子が以前とちがうことに気が付いたのはそれから数日経ってからのことだ。みそ汁の味が急にこくなったり、そうではなかったりしたのでぼくは何気なく「なんだか最近、みそ汁の味がヘン。」と言ってしまった。すると、お母さんはとても困った顔をした。
「実はね、手術をしてから味と匂いが全くないの。だから、料理の味付けがてきとうになっちゃって・・・」お母さんは深いため息をついた。そう言われてみると最近のお母さんはあまり食事をしなくなった。作るおかずも特別な味付けが必要ないものばかりだ。
しだいにお母さんの手作りの料理が姿を消していった。かわりに近くのスーパーのお惣菜が食卓に並ぶようになった。そんな状況を見てぼくは一つの提案を思いついた。ぼくは料理が出来ないけれどお母さんの味は覚えている。だから、料理はお母さんがして味付けはぼくがする。共同で料理を作ることを思いついた。
「ぼくが味付けをするから、一緒に料理を作ろうよ。」ぼくからの提案にお母さんは少しおどろいていたけど、すぐに賛成してくれた。「では、ぶりの照り焼きに挑戦してみようか」お母さんが言った。ぶりの照り焼きは家族の好物だ。フライパンで皮がパリッとするまでぶりを焼く。その後、レシピ通りに作ったタレを混ぜる。そこまではお母さんの仕事。タレを煮詰めて家族が好きな味に仕上げるのがぼくの仕事。だいぶ照りが出てきたところでタレの味を確かめる。「いつもの味だ。」ぼくがそう言うと久しぶりにお母さんに笑顔が戻った。
その日からお母さんとぼくの共同作業が始まった。お父さんも時々加わった。
ぼくは朝、一時間早起きをして一緒に食事を作るようになった。
お母さんは家族をあまり頼りにしないで一人でなんでもやってしまう。でもね、お母さん、ぼくがいるよ。ぼくはお母さんが思っているよりもずっとしっかりしている。だから、ぼくにもっと頼ってもいいよ。ぼくがいるよ。
いつか、お母さんの病気が治ることを祈りながら心の中でそうくり返した。