クローズアップ現代 夭折した天才棋士村山聖
村山先生の壮絶な人生を語るには
放送時間25分はあまりに短い。
こんな人がいました、くらいの内容だった。
あとは漫画で読んで下さい、ということか。
亡くなった先生だから、インタビューの
エピソードもきれいごとばかりでしたが
当時は同僚の関西棋士はヒドイことを
言ってた。
「くさい」「臭いで将棋がさせない」
「たまには風呂に入れば」「何だあのヘアスタイル」
人見知りでね
テレビの大盤解説でも司会の山田久美女流に
無表情だった。
困った山田が「女流の間では村山先生の声が素敵と
噂し合ってます」なんて歯が浮く様なお世辞を言ってた。
村山先生は難病で風呂に入ると高熱が出るんだ。
村山先生を研究している評論家が
「結局、彼は無頼派だった」と指摘しました。
これは違うと思う。
いつ死ぬか分からないから、人生のすべてを将棋に
かけて、あとの人間らしい生活は切り捨てたのだろう。
無頼派とはちょっと違う。
最後の真剣師の小池重明、あれが無頼派だ。
恩人を裏切り、駆け落ちを数回やり、最後は自分で
点滴の針をぬいて絶命した新宿の殺し屋。
村山先生は人見知りで愛嬌がなかった。
「男はつらいよ」の渥美清が最後の映画の撮影で
沖縄や九州を訪れた時、
沿道には人気俳優をひと目見ようと大勢のファンが
手を振り、握手を求めた。
でも渥美清はニコリともせず、ファンすら見なかった。
共演で長年浅草で一緒に苦労した関敬六がそんな渥美に
何か言うと、渥美は
「俺はもういいんだ」と答えたそうだ。
村山先生と同じで、いつ死ぬか分からない渥美は
映画の完成にすべてを集中していたのだ。
これは無頼派ではないと思う。
悲しいくらいに鬼気せまる怨念みたいなものだ。
強い薬のステロイド系のホルモン治療で
村山先生は顔がまるくなるムーンフェイスだった。
あの風貌が忘れられない。
羽生さんと対戦して「何でこんなに強いんやろ」と
羽生さんとの棋力の差に絶望していた。