やすらぎの刻~道
しのちゃんが機織りで織った布は
公平の予想に反して三平の為の
ものではなく、海軍航空隊に入隊した
公次に贈るものだった。
機織りの練習を岸本加世子に教わりながら
けなげに銃後の務めをやっていたのだ。
公平はそれが恋敵の三平のものではないと知り
単純に喜んでいる。
ひとり言だから当たり前ですが
ひとり言が正直すぎる。
性格はいたって単純であると、ひとりごとで
自己紹介している様なものだ。
青っ洟の婚約者は、犬山と月明りの土手で
みだらな行為におよんだ女狐とは別人じゃないの?
一度すれ枯らしになると元の清純にはもどれず
臭いみたいなものが体につく。
どんなに隠そうとしてもちょっとした仕草や言葉に
でるものらしい。
犬山が青っ洟に嫉妬してからかったんだよ。
だとすると根来家には困ったことだ。
犬山は誰にやられたか、すぐに気がつく。
根来家の土地は犬山のオヤジのものだ。
怪我の程度にもよりますが、土地を取り上げられたら
最悪ですよね。その日から死活問題になる。
三平と、しのちゃんの文通は
短い文章の往復だけに、頭で何度も反芻して
かえって相手の気持ちをよく理解できると思う。
きっと愛情が深まる。
でもあの木の穴にヘビがいたら危ないね。
いかにもヘビがいそうな森じゃない