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2019年7月24日 (水)

やすらぎの刻~道

熊のフミコが死んだ。
山に食べ物がなくなり
山をおりて村の家畜を荒らすフミコは
村人とは利害が対立する困った熊だったが
歳古るにしたがい特に身近に接していた鉄兵には
心が通じ合う友人の様な特別な熊だった。

鉄兵が肉をさばく時、何か言いたそうな
目で鉄兵を見たらしい。

ひと晩、血ぬきをして、明日フミコを
食べると言い残して鉄兵はフミコの
赤い肉のかたまりを土間の桶の上にのせて
沈痛な表情で帰って行った。

公一と公平は死を待つばかりの
公一が昔好意を持っていた女の人の家から
帰ったばかりで

フミコの肉が肺炎で吐血した女の人の赤い血を
妙に連想させた。
女の人とはもう会えないだろう。
たった1日で近しい間柄2組と世さらばだ。

戦争が世の中を暗くしている。
戦争さえなければ満蒙開拓団もないだろうし
満人が土地を奪われることもなかったろうし
女の人が肺炎にかかる事もなかったろう。

室井先生の戦死もなく
満州の夜空は満天の星で
根来家の夜空も同じ

公平は「自分はついてない」が口癖だけど
戦争のせいで全員がついてない。
しかもまだ始まりで、これからもっと悪くなる。

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